『美術館を手玉にとった男』 記事



News

30年間贋作を制作し、資産家や神父を装って美術館に寄贈し続けた男

ニューズウィーク日本版のコラム「映画の境界線」の第8回(10月30日更新)で、サム・カルマン&ジェニファー・グラウスマン監督のドキュメンタリー『美術館を手玉にとった男』(14)を取り上げました。スティーヴン・スピルバーグの『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』(02)と対比しつつ作品の魅力に迫るような内容になっています。

コラムをお読みになりたい方は以下のリンクからどうぞ。

30年間贋作を制作し、資産家や神父を装って美術館に寄贈し続けた男|『美術館を手玉にとった男』

今週末公開オススメ映画リスト2013/03/28

週刊オススメ映画リスト

今回は、『ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの』『隣人 ネクストドア』『チャイルドコール 呼声』の3本に、“フレンチ・フィーメイル・ニューウェーブ”で特集上映される3作品『グッバイ・ファーストラブ』『スカイラブ』『ベルヴィル・トーキョー』を加えた計6本です。

『ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの』 佐々木芽生

2010年に公開されてロングランを記録したドキュメンタリー『ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人』の続編です。但し、前作を観ていなくともわかるような構成になっています。この2作品の魅力は、“小さいことがとても大きなものにつながる”という言葉に集約できます。

郵便局員と図書館司書だったハーブとドロシー夫妻は、独自の審美眼と類希な情熱で、お給料で買えて1LDKのアパートに収まるアートを買い集め、それがいつしか世界でも屈指の歴史に残るアートコレクションになります。ふたりはそのコレクションを一点も売ることなく、アメリカの国立美術館に寄贈します。それが前作の物語でした。

この続編では、その国立美術館でさえも夫妻の大量のアートをすべて受け入れることが不可能であることが判明し、全米50州の美術館に50作品ずつ、計2500点を寄贈するプロジェクトが動き出します。そのプロジェクトが背景になっているので、ハーブとドロシーとともに、全国に散っていったコレクションを訪ねて歩くロード・ムービーと見ることもできます。

ハーブとドロシーはコレクターとして作品を買うだけではなく、アーティストの成長や作品の変化を追いかけ、その本質を知ろうとすることによって、アーティストたちと親密な関係を築き上げてきました。そういう意味では、ハーブとドロシーが親で、アーティストが子供たちで、彼らの作品が孫ともいえます。この映画は、コレクションが分散するという難しい選択を通して、そんな親密な関係を再確認していく物語ともいえます。

続きを読む

『パパの木』 『チャイルドコール 呼声』 試写

試写室日記

本日は試写を2本。

『パパの木』 ジュリー・ベルトゥチェリ

長編劇映画デビュー作『やさしい嘘』(03)で注目を浴びたフランス出身の女性監督ジュリー・ベルトゥチェリの新作。どちらも愛する者の死を残された家族がどのように受け入れていくのかを描いていることになる。

オーストラリアの辺境に暮らす主人公一家は突然、大黒柱を喪うが、まだ幼い末娘のシモーンは、庭の巨木に父親がいると信じ、その思いが次第に家族に伝わっていく。

特殊効果を使うようなスーパーナチュラルな表現は一切やらず、すべてが自然との繋がりで描かれる。その自然がなかなか凄い。夜に窓を開けていると、突然なにかが飛び込んできて、部屋を舞う。それは巨大なコウモリなのだが、そんな野生の生き物に当たり前に取り巻かれた世界に引き込まれる。

一家は巨木に象徴される自然を通して、彼らにとって最も大切なものに目覚めていく。ジュディ・パスコーの『パパの木』という原作があるためかどうか定かではないが、安易に神秘性に頼ってしまうでもなく、感傷に流されるでもなく、母親が最後に口にする台詞に集約されるように、筋が一本通っていて実にいい映画である。詳しいことはまたレビューで書きたい。

続きを読む

『ジャッキー・コーガン』 『隣人 ネクストドア』 試写

試写室日記

本日は試写を2本。

『ジャッキー・コーガン』 アンドリュー・ドミニク

『ジェシー・ジェームズの暗殺』(07)のアンドリュー・ドミニク監督とブラッド・ピットが再び組んだ作品なので、当然、一筋縄ではいかない。筆者がチェックした限りでは、アメリカの評価は気持ちいいくらいに真っ二つに分かれている。大絶賛かボロクソか。

筆者は、ドミニク監督のアプローチが見えたところですんなりツボにはまる。ブログにも表れていると思うが、筆者はポスト・カトリーナのニューオーリンズに強い関心を持ち、それがどのように音楽や映画に表現されるかに注目してきた。

たとえば、クリスチャン・スコットの『アンセム』(07)、ダーティ・ダズン・ブラス・バンドの『What’s Going on』(06)、Ted Hearneの『Katrina Ballads』(10)、Hurray for the Riff Raffの『It Don’t Mean I Don’t Love You』(09)、ヴェルナー・ヘツォークの『バッド・ルーテナント』(09)、ロジャー・ドナルドソンの『ハングリー・ラビット』(11)、そして、最近の試写室日記に書いたばかりのベン・ザイトリンの『ハッシュパピー バスタブ島の少女』(12)などだ。

続きを読む

今週末公開オススメ映画リスト2013/02/21+α

週刊オススメ映画リスト

今回は『世界にひとつのプレイブック』『マーサ、あるいはマーシー・メイ』の2本とおまけの『逃走車』コメントです。

『世界にひとつのプレイブック』 デヴィッド・O・ラッセル

まずは『世界にひとつのプレイブック』試写室日記をお読みください。時間がなくてまだレビューを書いていませんが、とても気に入っている作品なので、近いうちにアップするつもりです。

心配なのは、この映画が評価されるにしてもされないにしても、心を病んだ男女を主人公にした一風変わったラブコメのように安易に位置づけられてしまうことですね。

映画の背景として、たとえば、アラン・V・ホーウィッツ&ジェローム・C・ウェイクフィールドの『それは「うつ」ではない:どんな悲しみも「うつ」にされてしまう理由』やゲイリー・グリーンバーグの『「うつ」がこの世にある理由:作られた病の知られざる真実』、デイヴィッド・ヒーリーの『抗うつ薬の時代:うつ病治療薬の光と影』、『双極性障害の時代:マニーからバイポーラーへ』など、共通するテーマを扱った本がたくさん出版されていることの意味を考えてみる必要があるかもしれません。

続きを読む