ゲラ・バブルアニ 『ロシアン・ルーレット』 レビュー

Review

アウトサイダー的俳優陣が放つ存在感

ロシアン・ルーレットが描かれた作品として多くの人が真っ先に思い出すのは、おそらくベトナム戦争を題材にしたマイケル・チミノ監督の『ディア・ハンター』だろう。この映画では、反政府組織の捕虜になった主人公たちがロシアン・ルーレットを強要される。そして彼らのひとり、ニックは精神を病み、この死のゲームにとり憑かれていく。

他にも、たとえば北野武監督の『ソナチネ』(93)では、沖縄の抗争に巻き込まれ、浜辺の廃屋に身を隠している主人公のヤクザが、舎弟とロシアン・ルーレットをはじめる(舎弟は青ざめるが、後で弾が入ってなかったことがわかる)。

エミール・クストリッツァ監督の『アリゾナ・ドリーム』(92)では、自殺願望を持つ娘グレースが、主人公アクセルにロシアン・ルーレットを持ちかける。ダニー・ボイル監督の『ザ・ビーチ』(99)では、タイの孤島にある秘密の楽園のリーダーが、他人に情報を漏らした主人公リチャードに、1発だけ弾を込めた銃を向ける。

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シルヴァン・エスティバル監督+女優ミリアム・テカイア・インタビュー

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マージナルな立場にこだわり、他者を理解し、受け入れる

『ガザを飛ぶブタ』監督と主演女優に取材でお伝えしたインタビューの記事がTIFFのサイトにアップされました。エスティバルは、フランスの通信社AFPのフォトディレクターとしてラテンアメリカを担当。ジャーナリスト、カメラマン、作家であり、砂漠についての書籍や、小説、テオドール・モノの伝記なども出版している。ミリアム・テカイアはチュニジア出身で、台湾映画にも出演しているとのこと。彼女の幸せオーラ、写真からでも伝わるのでは。

インタビューは↓こちらからどうぞ。
【公式インタビュー】コンペティション『ガザを飛ぶブタ』

『ガザを飛ぶブタ』監督と主演女優に取材

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ジャーナリスティックな視点と強烈なユーモアのコントラスト

TIFFのコンペ作品『ガザを飛ぶブタ』の監督シルヴァン・エスティバルと主演女優のミリアム・テカイアにインタビューした。フランス人のエスティバルは、ジャーナリスト、カメラマンであり、小説や伝記を書く作家でもある。ちなみに彼の小説「Le dernier vol de Lancaster」は、カリム・ドリディ監督、マリオン・コティヤール、ギョーム・カネ主演で映画化されている。筆者は観たことないが、どうも原作の脚色がひどかったらしく、これなら自分で作れると思ったことも、映画に進出した理由のひとつになっているとのこと。

試写室日記でも少し書いたと思うが、一方で非常にジャーナリスティックな視点を盛り込みながら、ブタから精子をとるためにブタのピンナップを作ってしまうというような、この極端な振幅はどうも性分であるようだ。

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『プレイ』 『最強のふたり』 『デタッチメント』 『哀しき獣』 試写

試写室日記

22日から始まるTIFF(東京国際映画祭)の上映作品を4本。

『プレイ』 リューベン・オストルンド

スウェーデンのリューベン・オストルンド監督が実話にインスパイアされて作り上げた作品。タイトルの『プレイ』が示唆するものは、ミヒャエル・ハネケの『ファニーゲーム(Funny Games)』に呼応しているともいえるし、マチュー・カソヴィッツの『憎しみ』の世界をハネケ的な分析と表現で描いた作品のようでもある。

生理的に拒絶反応を起こすような表現も盛り込まれており、賛否両論あるかと思うが、筆者は引き込まれた。シェルビー・スティールが『黒い憂鬱』で提起しているような問題とも絡む要素がある。

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『キツツキと雨』 『ガザを飛ぶブタ』 『別世界からの民族たち』試写

試写室日記

22日から始まるTIFF(東京国際映画祭)の上映作品を3本。

『キツツキと雨』 沖田修一

『このすばらしきせかい』や『南極料理人』の沖田監督作品。役所広司と小栗旬のやりとりがあまりに可笑しくて、観ているあいだに何度吹き出してしまったことか。引き延ばしたり、スパッと切るドラマの間やタイミングも絶妙で。

『南極料理人』は原作があったので、設定や人物の関係がいくぶん整いすぎているところがあったが、この新作は『このすばらしきせかい』をシュールに発展させた感じ。『このすばらしきせかい』の主人公の若者と叔父さんの関係が、駆け出しの映画監督と木こりの関係に引き継がれている。

沖田ワールドに欠かせない古舘寛治が今回は狂言回しのようなポジションを担い、『このすばらしきせかい』で古舘が占めていたポジションに役所広司が入っているのだが、これがまたはまっている。それにしても映画監督と木こりがこんなふうに結びついてしまうなんて、面白すぎる。

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