『ブルーバレンタイン』 『四つのいのち』試写

試写室日記

本日は試写を2本。

『ブルーバレンタイン』 デレク・シアンフランス

ミシェル・ウィリアムズとライアン・ゴズリングの演技は素晴らしいが、それだけで映画が支えられているように見えてしまう。企画が暗礁の乗り上げ、11年間も脚本の改稿を重ね、監督の頭のなかで作品のイメージが固まってしまうと、それが実際の現場で足枷になってしまうことが少なくない。

『四つのいのち』 ミケランジェロ・フランマルティーノ

アピチャッポン・ウィーラセタクンの『ブンミおじさんの森』のようにフィクションを盛り込み、人間中心主義から脱却しアニミズムの世界を切り拓く映画でありながら、レイモン・ドゥパルドンの『モダン・ライフ』のようなドキュメンタリーを観ているような錯覚におちいるところが実にユニーク。

『台北の朝、僕は恋をする』『キッズ・オールライト』『ザ・ファイター』試写

試写室日記

本日は試写を3本。

『台北の朝、僕は恋をする』 アーヴィン・チェン

アメリカに生まれ育ち、台湾を拠点に活動するアーヴィン・チェン監督作品。台北の街のなかを複数の登場人物たちが動き回り、絡み合っていく物語は、頭のなかで組み上げた構成を、実際の街や映像のなかにどう落とし込み、映画としてのリズムやダイナミズムを生み出すかが課題になる。この映画の場合は、まだ脚本を引きずっていて、映像に昇華されていないように見える。
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02/10トークショー終了



News

『ゼロ年代アメリカ映画100』刊行記念トークショー、無事に終了いたしました。人前でお話をするのは、レッドフォードの『クイズ・ショウ』の一般試写で、上映前に作品の紹介をやって以来ほぼ15年ぶりだったので、どうなることやらと内心ひやひやしてましたが、場慣れした大森さんのおかげでひどい混乱に陥ることもなく、2時間弱、最後まで乗り切ることができました。

会場も盛況でひと安心。個人的なゼロ年代ベストテンの作品に触れつつ、脳内、50年代サバービア、サンフェルナンド・ヴァレー、南部、国境、野生、生者と死者など様々なテーマを取り上げましたが、いかがだったでしょうか。ご来場いただいたみなさま、ありがとうございました。

今週末公開オススメ映画リスト2011/02/03+α

週刊オススメ映画リスト

今回は『ザ・タウン』『再会の食卓』『心中天使』の3本です。

おまけとして『ウォール街』の続編『ウォール・ストリート』とブラッド・アンダーソン監督の『リセット』の短いコメントをつけました。

『ザ・タウン』 ベン・アフレック

ベン・アフレックの監督第2作。強盗が家業のように引き継がれている共同体。そんな共同体が内部と外部の双方から崩壊していくことが、このドラマをより印象深いものにしている。詳しいことは『ザ・タウン』レビューをお読みください。

『再会の食卓』 ワン・チュエンアン

前作『トゥヤーの結婚』とこの『再会の食卓』。二作つづけて二人の夫を持つヒロインの物語を映画にする監督などそうそういるものではない。そういう家族のかたちが、個人と社会や歴史を深く結びつけ、複雑な感情が描き出される。詳しいことは『再会の食卓』レビューをお読みください。

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ベン・アフレック 『ザ・タウン』レビュー



Review

土地そのものとの関係が希薄な幻想の共同体と確かな感触を持つ土を媒介にした絆

ベン・アフレックの監督第2作、チャック・ホーガンのミステリー『強盗こそ、われらが宿命<さだめ>』を映画化した『ザ・タウン』でまず興味をそそられるのは、物語の舞台となるマサチューセッツ州チャールズタウンだ。

ボストンの北東部に位置し、住民たちが“タウン”と呼ぶこの地域は、他のどの地域よりも多くの銀行強盗、現金輸送車強盗を生み出してきた。もちろんそれには理由がある(ことになっている)。かつてチャールズタウンには凶悪犯罪者用の最重要警備刑務所が存在し、その刑務所が移転したあとも、犯罪者の共同体が残った。

アフレックがそんな背景に関心を持っていたことは、プレスに収められら彼のコメントから察せられる。

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