今週末公開オススメ映画リスト2011/10/27

週刊オススメ映画リスト

今回は『フェア・ゲーム』、『ウィンターズ・ボーン』、『ゴモラ』の3本です。

『フェア・ゲーム』 ダグ・リーマン

イラク戦争に前後する時期には、アメリカ政府やCIAのなかで信じがたいことがいろいろと起こっていた。フセイン政権は開戦前に裏ルートを通じて大量破壊兵器を保有していないことをアメリカに伝えようとしたが、アメリカはバグダードで会おうと、これを突っぱねた。

どうしても戦争がしたいアメリカが飛びついたのは、国外追放処分を受けたイラク人で、“カーブボール”という暗号名を持つ人物の極めて信憑性が薄い大量破壊兵器の情報だった。

バグダード陥落後、故郷で米軍に拘束された大統領補佐官アル・ティクリティは、イラクに大量破壊兵器などなく、とうの昔にすべて破棄されたと告げたが、兵器を探し出すというブッシュ政権の目標が変わることはなかった。

実はCIAは、このアル・ティクリティが告げた事実を開戦前につかんでいた。ところが、政府やCIAの上層部から圧力がかかる。『フェア・ゲーム』では、そこから起こった事件が描き出される。

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『floating view 郊外からうまれるアート』 [編] 佐々木友輔



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“郊外”をこれまでとは違う新たな視点からとらえ表現する試み

今年の2月から3月にかけてトーキョーワンダーサイトで行われた企画展「floating view 郊外からうまれるアート」の展覧会カタログ+論考集が刊行されました。

amazonで8月1日より販売開始、書店に置いていただく準備も進められているとのこと。

若林幹夫、藤原えりみ、藤田直哉、丸田ハジメ、渡邉大輔、柳澤田実、池田剛介、宮台真司、floating view参加作家という豪華な執筆陣で、私も参加させていただきました。詳しい内容はこちらをご覧ください。

『floating view 郊外からうまれるアート』

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『なぜ僕はドキュメンタリーを撮るのか』 想田和弘

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瞬間と向き合い観察すること、瞬間を受け入れて生きること

想田和弘監督の前の著書『精神病とモザイク タブーの世界にカメラを向ける』では、観察映画第2弾となる『精神』(2008)誕生の背景や作品に対する様々な反応が綴られていた。新しい著書『なぜ僕はドキュメンタリーを撮るのか』では、現在公開中の観察映画最新作『Peace』(2010)の製作過程を振り返りつつ、「ドキュメンタリーとは何か」というテーマが掘り下げられていく。

しかし、本書のなかでその問いに対する答えが出るわけではない。たとえば、テレビのドキュメンタリーの現場で想田監督が体験したことやフレデリック・ワイズマンの影響についての記述からは、「観察映画」という独自の発想とスタイルが形成される背景が見えてくる。だが、それは答えではない。本書は、答えが見えないからこそ、『Peace』のような作品が生まれるのだということを巧みに物語っている。

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『哲学者とオオカミ――愛・死・幸福についてのレッスン』 マーク・ローランズ

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オオカミという他者を通して人間とは何なのかを考察する

想田和弘監督の『Peace ピース』(7月16日公開予定)の試写を観たときに最初に思い出したのがこの本のことだった。そこでぱらぱらと読み返してみた。

最初に読んだときも引き込まれたが、今では著者の言葉がもっと身近に感じられる。それは、『ブンミおじさんの森』、『アンチクライスト』、『四つのいのち』、『4月の涙』(野生のオオカミが出てくる場面がある)、『蜂蜜』、『エッセンシャル・キリング』といった作品を通して、人間と動物の関係に以前よりも鋭敏になっているからだろう。

マーク・ローランズはウェールズ生まれの哲学者で、本書では、ブレニンという名のオオカミと10年以上に渡っていっしょに暮らした経験を通して、ブレニンについて語るだけではなく、人間であることが何を意味するのかについても語っている。

↓ この人がローランズだが、いっしょにいるのはもちろんブレニンではない。ブレニンは、各地の大学で教えるローランズとともに合衆国、アイルランド、イングランド、フランスと渡り歩き、フランスで死んだ。ローランズはその後マイアミに移り、この映像はそこで撮影したものだ。

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『祝祭性と狂気 故郷なき郷愁のゆくえ』 渡辺哲夫



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現代精神医学という封印を解く

本書については、ラース・フォン・トリアーの『アンチクライスト』のレビューのなかで、長めに紹介、引用しているので、そちらを先に読んでいただければと思う。

また取り上げるのは、『アンチクライスト』だけではなく、トルコのセミフ・カプランオール監督のユスフ三部作(『卵』、『ミルク』、『蜂蜜』)を観るうえでも、参考になるからだ。

ユスフ三部作では、ユスフという主人公の成長過程を追うのではなく、壮年期から青年期、幼少期へと遡っていく。そんな三部作の共通点として見逃せないのが、登場人物が発作を起こして倒れる場面が盛り込まれていることだ。それらは癲癇の発作のように見える。

●第一作『卵』
2:00を過ぎたあたりにその場面が出てくる。

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