『ミラノ、愛に生きる』 『ラビット・ホール』試写

試写室日記

本日は試写を2本。

『ミラノ、愛に生きる』 ルカ・グァダニーノ

故デレク・ジャーマン作品のミューズ、『フィクサー』でアカデミー助演女優賞を獲得したティルダ・スウィントンが、主演だけではなく企画の段階から深く関わり、プロデュースも手がけている作品だが、これは素晴らしい。先日観た『灼熱の魂』も圧倒されたが、こちらはまた別の意味ですごい。引き込まれた。

Bunkamura ル・シネマのリニューアルオープニング作品ということで、ミラノの上流社会とかファッションとかメロドラマとか、それらしいカラーに染められた世界にはなっているが、まったく違った見方ができる。

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「BRUTUS」のスター・ウォーズ特集

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スター・ウォーズのBlu-rayを体験した人も未体験の人も、ぜひ

1日(土)発売の「BRUTUS」10/15号のスター・ウォーズ特集でコラムを書いております。テーマは“『スター・ウォーズ』と神話”。このテーマで真っ先に思い浮かぶものといえば、神話学者ジョゼフ・キャンベルの『千の顔をもつ英雄』でしょう。キャンベルとビル・モイヤーズの対談を収めた『神話の力』(飛田茂雄訳/早川書房/1992年)にはこのように書かれています。

「ルーカスがキャンベルの著作から恩恵をこうむったことを明らかにしたうえで、<スター・ウォーズ>三部作を見に来てほしいとキャンベルを招待してから、二人は親友になっていた」

「BRUTUS」2011 10/15号

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『スリーデイズ』 劇場用パンフレット



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ラッセル・クロウ主演、ポール・ハギス監督最新作!

フランス映画『すべて彼女のために』(ビデオ・タイトル:ラスト3デイズ~すべて彼女のために)をポール・ハギスがリメイクした『スリーデイズ』が本日(9月23日)より公開になります。サスペンス・アクションといわれるような題材でも、ハギスは独自の視点を埋め込み、個人と時代や社会の関係を浮き彫りにしています。

この映画の劇場用パンフレットで、「代償は高くても自由を求める意味を考える」というタイトルのコラムを書いています。『ミリオンダラー・ベイビー』『クラッシュ』『告発のとき』などとの繋がりにも言及したポール・ハギス論になっています。劇場で作品をご覧になったらぜひチェックしてみてください。

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ジョエル&イーサン・コーエン 『シリアスマン』 レビュー

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不運を嘆き、考え込むのではなく、笑いに転化して前に進む

コーエン兄弟の『シリアスマン』は、これまでの彼らの作品と違った印象を与えるかもしれない。それは、ユダヤ系の家族やコミュニティのドラマにこの兄弟のバックグラウンドが反映されているからだ。しかし、ユダヤの文化や慣習を理解していなければ楽しめないということはない。この映画は、ひとつのことを頭に入れておけば、たっぷり楽しむことができる。

たとえば、ユダヤ文学には、シュレミール(schlemiel)やシュリマゼル(schlemazel)というように表現される人物像が頻繁に登場する。それらは、なにをやっても裏目に出るドジな人物や災いばかりが降りかかるどうにもついてない人物を意味する。コーエン兄弟にとってこうした人物像は身近なものであるはずだ。

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ダニー・ボイル 『127時間』 レビュー

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予期せぬ事故に遭ったとき、
人はなにに目覚めるのか

ダニー・ボイルの新作『127時間』は、アーロン・ラルストンが自らの体験を綴ったベストセラーの映画化だ。主人公アーロンは、ユタ州のブルー・ジョン・キャニオンでいつものように週末のロッククライミングを楽しんでいた。ところが、不安定な岩塊とともに落下し、断崖と岩塊に右腕をはさまれ、無人の荒野で身動きがとれなくなってしまう。それから127時間、岩塊と格闘しつづけた彼は、生きるための決断を下す。

ボイルはこれまで様々な設定を通して人間のエゴを掘り下げてきた。『シャロウ・グレイヴ』(95)の三人の主人公は、それぞれに安定した仕事につき、洒落たフラットをシェアし、他人を見下している。だが、彼らの生活レベルを遥かに上回る大金が転がり込んできたことから、やがて騙し合い、殺し合うことになる。『28日後…』(02)の主人公たちは、ウイルスが蔓延する世界のなかでサバイバルを余儀なくされる。だがやがて、感染が生み出す恐怖を人間のエゴが凌駕していく。

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