『ブルーバレンタイン』 『四つのいのち』試写

試写室日記

本日は試写を2本。

『ブルーバレンタイン』 デレク・シアンフランス

ミシェル・ウィリアムズとライアン・ゴズリングの演技は素晴らしいが、それだけで映画が支えられているように見えてしまう。企画が暗礁の乗り上げ、11年間も脚本の改稿を重ね、監督の頭のなかで作品のイメージが固まってしまうと、それが実際の現場で足枷になってしまうことが少なくない。

『四つのいのち』 ミケランジェロ・フランマルティーノ

アピチャッポン・ウィーラセタクンの『ブンミおじさんの森』のようにフィクションを盛り込み、人間中心主義から脱却しアニミズムの世界を切り拓く映画でありながら、レイモン・ドゥパルドンの『モダン・ライフ』のようなドキュメンタリーを観ているような錯覚におちいるところが実にユニーク。

『台北の朝、僕は恋をする』『キッズ・オールライト』『ザ・ファイター』試写

試写室日記

本日は試写を3本。

『台北の朝、僕は恋をする』 アーヴィン・チェン

アメリカに生まれ育ち、台湾を拠点に活動するアーヴィン・チェン監督作品。台北の街のなかを複数の登場人物たちが動き回り、絡み合っていく物語は、頭のなかで組み上げた構成を、実際の街や映像のなかにどう落とし込み、映画としてのリズムやダイナミズムを生み出すかが課題になる。この映画の場合は、まだ脚本を引きずっていて、映像に昇華されていないように見える。
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アッバス・キアロスタミ 『トスカーナの贋作』レビュー

Review

監督には性格が悪いところもないと面白い映画は作れない

『トスカーナの贋作』は、アッバス・キアロスタミがイランを離れてから初めて撮った長編作品だ。

物語はイタリアの南トスカーナ地方にある町アレッツォから始まる。『贋作』という著書を刊行したイギリスの作家ジェームズ・ミラー(ウィリアム・シメル)がこの町を訪れ、講演を行っている。会場にいた女(ジュリエット・ビノシュ)が、ぐずる息子をもてあまし、作家の著作の翻訳者にメモを渡し、その場をあとにする。

そのメモはジェームズに届けられ、彼の関心を引いたらしい。作家は彼女が経営するギャラリーを訪れ、二人は車でルチニャーノに向かい、美術館や町を散策する。贋作について議論を交わす彼らは、カフェの女主人に夫婦と勘違いされたことをきっかけに、夫婦のように振る舞いだす。

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02/10トークショー終了



News

『ゼロ年代アメリカ映画100』刊行記念トークショー、無事に終了いたしました。人前でお話をするのは、レッドフォードの『クイズ・ショウ』の一般試写で、上映前に作品の紹介をやって以来ほぼ15年ぶりだったので、どうなることやらと内心ひやひやしてましたが、場慣れした大森さんのおかげでひどい混乱に陥ることもなく、2時間弱、最後まで乗り切ることができました。

会場も盛況でひと安心。個人的なゼロ年代ベストテンの作品に触れつつ、脳内、50年代サバービア、サンフェルナンド・ヴァレー、南部、国境、野生、生者と死者など様々なテーマを取り上げましたが、いかがだったでしょうか。ご来場いただいたみなさま、ありがとうございました。

ミヒャエル・ハネケ 『白いリボン』レビュー



Review

独自の視点で向き合うナチスとファシズム

■■物語の舞台設定とドイツ帝国成立の過程■■

ミヒャエル・ハネケは、精緻な考察と斬新な表現でヨーロッパの歴史や社会の暗部を抉り出してみせる。『ピアニスト』(01)に登場するピアノ教授のヒロインは精神的に男になっているが、それは伝統や制度に潜む男性優位主義に呪縛され、欲望を規定されているからだ。『隠された記憶』(05)に描き出される人気キャスターの忘却と不安、過剰な自己防衛は、歪曲され、黙殺されたマグレブ移民弾圧の歴史に起因している。

新作『白いリボン』ではハネケの鋭敏な感性がさらに研ぎ澄まされているが、それは彼が見出した題材と無関係ではないだろう。ミュンヘンに生まれ、オーストリアで育ち、近年はフランスを拠点に活動してきたハネケは、この新作でドイツと向き合い、独自の視点からナチスやファシズムに迫っている。

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